personal30短大8回生 渡辺桂子さん

あの人、この人 | INTERVIEW 30夢中になれる物が見つかると、生きている毎日が愛おしくなりますよ!

短大8回生 渡辺 桂子さん
伝統工芸士(名古屋友禅)

邦友会誌 Vol.44(2008.10)に掲載された記事より
短大8回生 渡辺 桂子さん

今回の「あの人この人」は短大8回生の渡辺桂子さんです。現在渡辺さんは名古屋友禅の世界で伝統工芸士として第一線で活躍されています。そんな渡辺さんの工房におじゃまして、みんなで初歩的な友禅染物体験をさせていただきました。

Qプロフィールを教えてください

短大ではデザイン専攻で、石田先生のゼミでした。今思えば、学生時代はどちらかと言えばおとなしくてあまり目立たなかったと思います。

  • 24歳で結婚し、三人の子供の母。
  • 34歳で友禅をはじめる。
  • 41歳で遊原工房を開く。
  • 2001年 名古屋友禅の伝統工芸士に認定される
  • 2003年 サロンドートンヌに入選、サロンデュブラン美術協会会員に推挙、全国小紋友禅染色協議会で第一席受賞
  • 2004年 サロンドートンヌに連続入選
  • 2005年 愛、地球博に、様々なシーンで作品発表

Q趣味を教えてください

絵を描くことは好きですが、実は読書のほうが好きで図書館司書の資格を持った人・児童文学を勉強している人・クリスチャンの人と私の4人で毎月読書会を開いています。私たちはそれぞれが普段読めない物を読むようにしているので、とても勉強になります。だから、この読書会も遠くからではあるけれど、自分自身を磨くための役に立てばいいかなと思います。

Q友禅をはじめたきっかけは?

3番目の子が保育園に入る頃、主人から「絵を描いてみたらどう?」と勧められ、前からやってみたかった友禅をやるために先生探しから始めました。そんな時、新聞で中部染色展の記事を見つけ名古屋友禅の存在を知りました。その染色展に行き一番気に入った作品の先生の元へ弟子入りしました。
その先生の所に行くために、車の運転は苦手でしたが、ここ(常滑市)から毎週(名古屋市)黒川まで4年間通いました。

Q受賞作品について教えてください

弟子入りしてから一生懸命努力した結果、次の年には中部染色展に着物を出品して、着物部門で賞をいただきました。このことを取り上げた新聞を読んだ名古屋友禅工芸協同組合の理事長からのお誘いを受け、その年から組合員として活動しています。その翌年に友禅組合の展覧会がありそこでも賞をいただきました。プロとしてプロの世界で受賞でき、とてもうれしかったです。

短大8回生 渡辺桂子さん

そして、『全国小紋友禅染色競技会』では、全国から集まった友禅作品約200点の中で1番を取ったんです。名古屋友禅の歴史上、京友禅や加賀友禅を抜いて1番になったのは初めてのことで、また全国で女性が1番になったのも初めてだったんです。
その後は、パリのサロンドートンヌで2年連続入選し、昨年は愛知県知事表彰をいただきました。今年は秋頃に東海5県の中部経済局の局長賞をいただくことになりました。

Q友禅を習うことで苦労や努力したことは?

習ったことを家で復習し、テレビも見ずハンドバックなど欲しい物があっても、我慢して筆や資料など友禅の物やそれに係わることだけに全てを注ぎ込んでいました。
元々この友禅の世界にはテキストが無かったので、はじめたばかりの頃からノートに書き綴ってきた内容をテキスト化しました。これを見ながら学生の皆さんがスムーズにステップアップしていけるようになりました。

Q「遊原工房」について教えてください

短大8回生 渡辺桂子さん

今この工房には13人の学生がいます。最初はハンカチから半襟・袱紗のような小物から始め、次に帯から着物へとだんだん大きくしていきます。本格的にやっている人も趣味でやっている人もいますが、ここでは全員が作品展に出展するようにしています。一年目は帯、二年目は着物を出品しています。
その他にも一日染物体験ができるようになっています。 (コットンスカーフ・ティーマット・コースターなどがあります)

Q貴女にとって友禅とは?

友禅は私の存在証明です。今の私からもし友禅を取ったら生きていけない気がします。
私は20年前に友禅をはじめられたことのうれしさがずっと忘れられません。
今もこれからも私の技術を教えて欲しいと言う人がいたら、その人達に伝えていきたいと思っています。またその人が友禅をやって良かったと思ってくれたらうれしいです。
これが、私の先生に対する恩返しだと思っています。
こうして伝統が受け継がれていくことや、習得した技術を高めていきながら常に成長していけることがうれしいです。

短大8回生 渡辺桂子さん

Q卒業生の皆さんへ一言お願いします

私が友禅をはじめたように、皆さんも何でもいいので夢中になれる物が見つかると、生きている毎日が愛おしくなりますよ!!
せっかくですから、楽しく生きたいですよね。

取材を終えて

今回が初めての取材だったので緊張しましたが、渡辺さんがとても明るく気さくな方で終始リラックスしたムードで取材することができました。
渡辺さんは3年前に開催された愛知万博のパビリオンで小物を出品したり、日本館総館長の竹下景子さんが式典の際に着た着物を作ったりとすでに大活躍されている方です。機会があったら、是非渡辺さんの作品をご覧になってみてください。
渡辺さんありがとうございました。

※インターネットで『伝統工芸士 渡辺桂子』と検索するといろいろ見ることが出来ます。

(担当 阿部・小久保・舞)

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